空路アマゾンへ [ブラジル]
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記
9/23|12日目
荷物の整理やらなにやらしていて結局2時間しか眠れず。朝8時、荷造りを終えてマイコと共に新館へ。チェックアウトの手続きをして、マイコは一足早く旅立つ。良い旅を。
出発の時間までコーヒーを飲む。そこには到着したばかりの夫婦が日系移民のおじいさんと話しこんでいる。専ら聞き役に徹して、おじいさんの昔話を上手い事引き出すおふたり。田中邦衛を男前にしたような40代後半の旦那が何となく印象に残ったのですが18日後再びサンパウロでこの家族と出会うことになる。
地下鉄で Tatuapé 駅まで向かいそこからローカルバスでグアルーリョス国際空港 Guarulhos へ向かう。3ヘアイス、安い!旅行者向けのリムジンバスが25ヘアイスなので1/8ですな。
photo by © HOSOI Toshiya
GOL航空です。4時間程度のフライトなので久しぶりに窓際の席をお願いする。発券を済まし空港内でノンビリ過ごす。国内線なので楽チンです。
ホットチョコレートを飲んでいるとギョッとする光景が。空港内の銀行に警備会社が荷を運んでいるんですがショットガンの引き鉄にいつでも指を架けられるように臨戦体勢で荷を運んでいる。すぐ目の前を警備員が大股で通り過ぎるんですが前後の二人がショットガンを、真ん中の荷を運ぶ人物が短銃を斜めに構え物々しい雰囲気。もしオレがちょっと痛い子で「ワーッ」なんて言いながら眼鏡ケースをポケットから取り出そうものならこりゃ蜂の巣ですな。
photo by © HOSOI Toshiya
座席に尻を落ち着かせると離陸を待たずに泥のように眠り込み、目覚めると窓から見えるは緑の絨毯。絨毯に時折入る糸くずのような道や運河、針の穴ほどのトラック。その凸凹の絨毯の上をスムーズに行く機影が面白いようにはっきりくっきり見える。米国西部上空から眺める藤壺みたいな山脈も数分眺めれば山脈が終わり、砂漠が始まるものですが、緑の絨毯は窓に額を貼り付けて30分40分眺めても途切れる気配がない。時速800kmで飛ぶ飛行機から眺める30分の、そのスケール感を何とか捉えてみようと試みるのですが、それは体感としてとてつもなくHUGE!!その気持ちは「地球はまだ大丈夫だ」という何ともいえない安心感。この感覚は厳密には間違っているかもしれないけど延々と続く緑の大地を眺めているとそんな気持ちになるんです。
高度を下げ、更に30分ほどでマナウス Manaus 着。ムワッと湿気を含んだ空気に包まれ空港ロビーへ。不愉快な態度の空港係員にキレる。客引きに囲まれるのですが、イライラを引き摺ってしまって情報だけもらって空港を出る。「なぜこのツアーに参加しないのかわからない!」と熱心に誘う客引きアームストロングが目を丸くする。理由は簡単、なぜなら虫の居所が悪いからだ!そんなわけで相場の値段のアマゾンツアー(空港送迎、前泊宿付き)を断り、ギュウギュウのローカルバスに乗り込む。ここは夏だ。汗が一気に流れ出る。旅行者はただの一人も乗っていない、空港で商売をしている地元の人々にじろじろと眺められる。セントロに向かうにはローカルバスを乗り継がなきゃいけないのですが2台目のバスで迷ってしまい結局タクシー。タクシーの兄ちゃんに紹介してもらったHOTEL KYOTOへ。ちなみに京都とは関係ないそうです。38ヘアイス。高いなぁ。でも久しぶりのシングルルームです。
ブラジル代表で言えばジーダそっくりのホテルの兄ちゃん(極めて無愛想)にツアー会社を紹介してもらうと5分後、石膏像で言えばゲタそっくりのアンドレが携帯電話を片手に現れる。アンドレのオフィスで話し込み、空港の客引きよりもほんの少しだけ安いアマゾンツアーに参加することにする。またアマゾン河を3泊4日で下るフェリーチケットも購入する(実際は4泊5日だった)。丸2日のアマゾンツアーは300ヘアイス、フェリーチケットは3食付で210ヘアイス。アンドレは自分の5~6コ年上の人なんですが家族を愛する素朴な人。英語でツアー内容を教えてくれるのですが喋っている間に話が脱線してしまう。家族の話になったりツアーでの観光客の話になったり。内容を覚えられないのでメモ書きを書こうとすると「俺が書いたげるよ」と始め、でも途中でメモ書きも続けられなくなってしまう。多分ひとつのことを建設的に行えない人なんだと思う。でも人の良さが全面に出ていて接しているとブラジル運気が上がってきていると実感できる。
アマゾン河を行くにはハンモックと空のペットボトル、日焼け止めと虫除けクリームが必要だということでアンドレが買い物に付き合ってくれた。ジャングル・フィーバーのサミュエル・L・ジャクソン似の陽気な友達も参加して町に繰り出す。土曜日のマナウスは商店が閉まり、チヘイロ・アランア広場以外は人影も少ない。でも広場の周りにはたくさんの出店が出ていて賑やかで楽しい雰囲気だ。アンドレの友達はイカシタ中年で軽口を叩いては笑わせてくれる。
photo by © HOSOI Toshiya
宿へ戻る。ひと休みをしているとすっかり暗くなる。メシとビールを買いに広場へ戻ると広場に面した飲み屋ではそれぞれにサンバの生演奏が鳴り響き、地元の漁師たちがビールを飲んでいる。陽気な音楽と踊る人々。人見知りだけれど話し始めると開けっぴろげに飛び込んでくる笑顔。あぁ、これこそ期待していたブラジルのイメージだ。ビールと夕食を買って一人部屋に戻るなんて出来ない。食べ歩きながら広場を歩き回る。そして一番気に入った感じのサンバを演奏している飲み屋へ。道に広げられたプラスチックの椅子にどっかと座り込みしこたま飲む。素敵過ぎる!なんて素敵なサンバだ。
ん、東洋人?日本人?という感じで隣席のオヤジ達が話しかけてくる。木彫りの人形のような形相の給仕のオバチャンは漁師達のオーダーを聞きながら相手の手を自分の尻に持ってくる。そして悪そうな顔でカッと笑うのだ。豹柄のスパッツを穿いたそんなオバチャンも俺の前では何だかはにかんでいてカワイイ。隣りの漁師と旅の指さし会話帳を介して会話をする。このオッサン、一切言葉を発っしなかったんですが今思えば喋れない人だったのかもしれない。
photo by © HOSOI Toshiya
サンビスタ2組の演奏が終わり、飲み屋の盛り上がりもひと段落。視界をグワングワン歪ませながら便所に向かうと店内にアンドレがいる。便所から戻るとアンドレに手招きされる。アンドレの友達はベロベロに酔っておどけているがアンドレの目は真面目。アンドレ曰く「マナウスはとても安全な町だ、事件なんて起きないよ。でもあまり羽目を外すなよ、ほどほどに」とのこと。アンドレのその保護者のような指摘が暖かい。リョウカイ、もう帰ります。まわりのオッチャン達に囃されて木彫りのオバチャンとハグで別れの挨拶。木彫りだと思っていたその頬はとっても柔らかい。
ホテルまでの道のりは散乱したゴミが舞うゴーストタウンのような雰囲気。文字通り千鳥足だったけど道端で眠る人々の傍らを通り過ぎる時はちゃんと歩こうと努める。宿の無愛想な兄ちゃんは酔っ払っていてほんのり頬を赤らめ、俺が缶ビールを持っていると彼なりの笑顔でサムアップ。幸せな気分で就寝。
posted by: トシ★細井
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