ふるさとは遠きにありて思ふもの [ブラジル]
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記
10/9|28日目
松尾さんがサンパウロへ出かけるようだ。眠り続ける。8時半過ぎに目覚め、顔を洗ってNo.2。腹の調子悪し。紙が切れてたのでケツを汚したままフリチンで彷徨い歩く。朝食はゆっくりたっぷり。
さて!少し肌寒いがビーチへ。目の前がコパカバーナビーチなのに泳がずに帰るのは育ててくれた両親に面目が立たない。泳いでる奇特な人も2名ほどいるし、オラッ!と飛び込む。
ん~、気持ちいい。海は無条件で楽しい。少しすると海中の方が暖かく感じ始める。30~40分ほど波と格闘しコパカバーナに抱いていたイメージを叩き潰す。
南国イメージとは程遠いシーズン外れのビーチだけれど、それはまた次回のお楽しみに。今日のお昼のバスでサンパウロに戻り、いよいよパンタナール湿原へ向かう予定。
宿に戻ってNo.2。腹の調子は相当に悪い。薬を飲んでチェックアウト。宿のおばちゃんにお礼を言い、ステキな笑顔に送り出される。ビンゴでバスが来たのでウリャッと乗り込む。
photo by © HOSOI Toshiya
右のおばちゃんに大変お世話になりました。
バスに揺られ少しすると遠く離れたところに親指の爪ほどのキリスト像が見える。もしや?と振り返り逆っ側を顧みるとポン・ジ・アスーカの雄大なる景色。今日は日が照っているわけではないが雲が高く雨も霧もない。あんなにも霧雨に包まれたリオ・デ・ジャネイロの街全体が今日は軽やかな表情に見える。まさかメインストリートからキリスト像が見れようとは。
真剣に悩む、15分ほど。バスを降りてもう一泊しようかな。なんだろう?体調や天気も含めて惨憺たる内容だったリオ観光をどうにかしたいという思いがあるのだろう。サンパウロまでのバスチケット代と日本からの飛行機代、この先の旅程などを秤に掛け、さまざまな切り口で検証を重ねる。ん~、腹を決める。いつになるかわからないけどもう一度来ます、リオ・デ・ジャネイロ、今度は夏に。
ロドビアリオに到着後サンパウロ行きの長距離バスに乗り込む。ほんの6時間の移動だが今までで一番良いバスのようだ。毛布に枕、ジュースにお菓子が詰まった袋。40時間のバスにこのサービスを付けてくれよ。毛布のおかげで強すぎる冷房に邪魔されず快眠&読書。18時、あっという間にサンパウロに戻ってきた。
地下鉄をサン・ジョアキン駅で下車し3週ぶりのペンソン荒木にチェックイン。宿泊者ノートにパスポート番号を書きつつ、前のページを覗いてみたけれどケンの名前はなかった。4号室に荷物を置く。ユーコさんがいた部屋だね。2ヶ月滞在していると言っていた絡みにくい兄ちゃんもいなくなっていた。
巡る巡る。旅人は巡る。なんだか感傷的な気分になりつつテレビ室に向かうとクリックリの坊主頭の兄弟が2人。タカユキとヒカル。お母さんに話を伺うと小学校を1年休学してご家族で世界一周されているとのこと。子供らがサッカーしたいと言うのでサン・パウロにひと月滞在してクラブに通っているとのこと。お母さんは「変人の両親なんで」と自嘲していましたが、なんてステキな子育てなんだ!と膝を打つ。
そういえば、とピンと来る。3週前のチェックアウト時にいたご夫婦だね。
photo by © HOSOI Toshiya
溜まった洗濯を洗っているとお母さんが宿の台所を使ってカレーを作っている。うまそうだ~。食欲を刺激され意気揚々とトンカツを食べに行く。何度夢に見たことか、愛しのトンカツ。カツ膳は閉まっていたので近くの定食屋へ。「イラッサイ」というヒスパニック系の姉ちゃんに迎えられ、客が一人もいないガランとした店内へ。「トンカツください!」トンカツはデフォルトで2枚。白いご飯と味噌汁にジ~ンとくる。旨いなぁ~。ん~ミラネーサっぽいと言えばぽいが、いやいや、これはトンカツだ。
photo by © HOSOI Toshiya
ふと左を見ると壁に室生犀星の小景異情。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしやうらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれにふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
醤油ありますか?と問うと髪に白いものが混じった店の主人が奥に声をかける。ご飯おかわりください!日本食ってうまいなぁ。韓国系の3人娘が入ってきて天ぷらうどんを啜っている。なんだか恥ずかしそうにそわそわしている。
日本食を食べたことで凝り固まった何かがみるみると溶けてゆく。熱っぽい痺れがジンジンと体を伝ってゆくが悪い気分ではない。気持ちの良い疲労だ。
posted by: トシ★細井
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