中継地サンタレン [ブラジル]
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記
9/29|18日目
5時半ごろ、人々の動く気配に目が覚める。マナウスとベレンの中継地サンタレン santarém に到着した模様。寝ぼけ眼のうちにディエゴがあっさりと船を降りてしまう。家族に会えるということで意気揚々と去っていく。いろいろと世話になったのに挨拶ができなくて残念。ここサンタレンでマッキーニョを除く3人が船を降りるとのこと。寂しいやね。
photo by © HOSOI Toshiya
歯を磨き顔を洗って食堂へ。食堂ではアドリアーナがひとりパンを齧っていた。昨日までいちゃついていたディエゴがあっさりと去ってゆき、アドリアーナはアドリアーナでその後姿をなんとはなしに見送っている、その刹那的な出会いと別れに日本人としては不思議な印象が残る。
朝食を終え、アドリアーナとはちゃんと別れの挨拶ができた。ハグとキス。船を降りてゆく後姿を眺め、旅ならではの郷愁に包まれる。gata gatinha!
photo by © HOSOI Toshiya
サンタレンには5時間の停泊予定。マッキーニョと船を降りて、少し離れた商店まで歩く。ジュースで乾杯。マッキーニョはなかなかの人物。冷静な観察者で気遣いの人。それでいて堂々としている。聞けばまだ17歳。ベネズエラ国境付近を4ヶ月(4週間?)旅していたその帰りだとのこと。たいしたものだね。
姉ちゃんに国際電話をかけ、マッキーニョを電話口に出させると無邪気な笑顔を見せる。
船は11時過ぎに出港。停泊で半分ぐらいになったハンモックもすぐに新たな乗客でいっぱいになる。昼食を意味するベルが鳴るとマッキーニョと急いで食堂へ。勝手知ったる何とやらで肉の塊を3回もおかわりする。
photo by © HOSOI Toshiya
その後船で初うんこ。ここのトイレはインドとはまた違った意味で覚悟のいるトイレ。匂いはきついし、便座はシッコまみれだしトイレットペーパーは原則じっとりと湿っている。そして水を流すと茶色い水が床一面に溢れ出てくる。水を流すと同時に爪先立ちする必要がある。
シャワー室はトイレの向かいにあるのだがこちらはこちらで難易度が高い。タオルや替えのパンツを掛けるような代物はなく、蛇口を開けば水がたっぷり出たりチョボチョボになったり。船のボイラーがゴンゴンと音を立て、サウナのように蒸し暑い。汗をシャワーで流すそばから滝のような汗が流れ、体を拭いて逃げるように船室に戻る必要がある。さっぱりしたのかしないのかさっぱりわからない。
その後昼寝を少々。
photo by © HOSOI Toshiya
4時、甲板でビールを飲んでいるとマッキーニョが登ってくる。夕飯をもう食べたというので急いで食堂に行くと「ヘージ Rede (ハンモック)はもうおしまいだ、カマロッチ(キャビン)とスイートが終わる6時に来い」とのこと。5時45分頃また行くと同じ兄ちゃんが「もう終わりだ、下のフロアで食べろ」と言う。そんなこんなでたらい回され、最終的に厳格そうな船長に船長室で時計を示され「5時6時ならわかるけどもう7時過ぎだ!」と普通に絞られる。なるほど、合点承知!サンタレンを境界に時差が1時間発生。
結局3等食堂で米と肉だけ恵んでもらう。まいうー。モーに「お前また食ってるの?」なんて言われるが説明が面倒なので曖昧な笑顔を浮かべる。放課後まで残されて給食を食べる小学生のそれである。3等のハンモック部屋は冷房がかかっていないのでとても蒸し暑い。ただこのあと2等の強烈な冷房で体調を思いっきり崩すことを思えば冷房のない3等で良かったのかもしれない。
photo by © HOSOI Toshiya
甲板に上がるとサンタレンから乗り込んだ生涯ヒッピーみたいな人々がプリミティブなスライド上映会の準備をしていた。甲板に椅子を並べゴミ袋を張り合わせたスクリーンにカチャカチャとスライドを投影する。32ミリフィルムに直接傷を付けたドローイング。アマゾンの風景、木、花、ジャカレー、鳥、メンバーの似顔絵。
ゴミ袋のスクリーンにしっくりこなかったのか、頭に馬糞のようなドレッドをぶら下げた男前の兄ちゃんが真っ黒なアマゾンの川面にスライドを照射する。往時のアレン・ギンズバーグのような爺さんやストレンジラヴ博士の助手のような姉ちゃんが歓声を上げてはカイシャ(太鼓)やアゴゴ(鉄製の打楽器)を叩く。当人たちは実に楽しそうだ。
ストレンジラヴ博士の助手のような姉ちゃんに話を聞くとどうやらこれはリオから旅をしているアートプロジェクトの一団でその後グルッと南下してサンパウロの片田舎にあるヒッピーコミュニティに向かうのだそうな。自家製のカシャッサを進めてくれるのだがこれが超ストロング。喉が焼けるようになる。
もう一人のちょっと可愛げな女の子曰くこのプロジェクトはひと月の旅なんだそうだがひと月とは思えないほど皆さん風貌が味出過ぎ、キャラ強過ぎ。
「何じゃ、この東洋人」みたいな感じで興味を持ってくれてアレン・ギンズバーグが太鼓やらマラカスやらを渡してリズム隊に加わるよう誘ってくれるのだけれど、いやぁ~俺、リズム感ないね、自分に残念。
photo by © HOSOI Toshiya
夜、昨日と同じようにモー達とカードで遊ぶ。周りでブラジルの兄ちゃんたちが酔っ払ってラジオの音楽に合わせ踊っている。なんだか自分も相当に酔っ払ってしまって、気付けばブラジルの兄ちゃんたちに混じって大騒ぎ。マッキーニョも加わって、サンパウロだ、フラメンゴだ(贔屓チーム)の繰り返し。ああ楽しい夜。
posted by: トシ★細井
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