100km先の道を見る [チリ]
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記
10/22|41日目
6時起床。寝ぼけ眼でチェックアウトの準備をしながら、ナニに別れの挨拶もできずに寝てしまったことに気付く。夕食にステーキを食べることもできなかった!つまらないツアーに参加したばっかりに、と悔いる気持ちが止めどもなく溢れる。タクシーを呼んでもらい、急いで荷物をまとめて、まだ薄暗い中をターミナルへ向かう。
ターミナルに到着。5分でクロワッサンとコーヒーの朝食を取り、バスに乗り込む。「おいおい、日本人5人目だよ」と運転手が目を丸くする。
7時出発。行き先はチリのアントファガスタ Antofagasta 。隣りの席はアルゼンチン女性。切符売りのオッチャンの根回しです。年は2コ下。パジャマみたいなスエット着てます。
photo by © HOSOI Toshiya
ひたすら眠り昼食の時間に目覚める。バスを降りてレストランへ。パンにカルネ、デザートはゼリー。めずらしくお代はチケット料金に含まれる。食後、外で一服していると日本人の大学生4人組が現れる。4人は服装にとても気を遣っていて砂漠の風景からすっかり浮いてしまっている。「ブラジルにひと月も行ってたんすか、すごいっすねー」みたいなウザイ会話。
アルゼンチンの国境で手続き。アルゼンチン側はサン・サルバドール・デ・フフイ San Salvador de Jujuy 、チリ側はサン・ペドロ・デ・アタカマ San Pedro de Atacama 。とは言っても双方、砂漠の中に倉庫が転がっているだけのイミグレーション。乾燥した地帯なので驚くほど鼻くそがすぐできる。アルゼンチン側で手続きを行ったあと、バスで砂漠を走るとチリ側の入国管理局。となりの女性はおそらく文盲で手続き書類の書き方がわからない様子。それは俺が教えて、係官の説明などは彼女が教えてくれる。
photo by © HOSOI Toshiya
チリに入国し、少しするとサン・ペドロ・デ・アタカマに到着。ここでバックパッカーの大半がバスを降りてしまう。バス停とは思えない素朴な町並みに嬉々として降りてゆくバックパッカーを横目で追い、急いでガイドブックを読み進める。その町には「月の谷」がある、その美しいネーミング。ノーチェックだった!そこがどういうところかはここには書かないが次に南米を訪れるときは、、。
photo by © HOSOI Toshiya
荒涼とした赤土のアタカマ砂漠を直進するバス。ボリビアまで5kmほどの国境地帯の景色はいつまで走ってもどこまでも変わらない。バスが進んでいるのか、景色が後退しているのか。日が傾いてゆくことで辛うじて時が進んでいることを認識できる。道路のすぐ脇では延々と続く地割れが道路に近寄ったり離れたりしている。フロントガラスの先の光景はどこまでも続く直線の坂道。永遠にたどり着かないのではないかと思える消失点を追いかける。
帰国後ある旅行記で同じ道をオートバイで走る描写があった。時速100kmで1時間走っても目の前にある雲の影だったか山だったかに追いつけないという。つまりなだらか過ぎて100km先が見えてしまうということ。
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photo by © HOSOI Toshiya
日が暮れた頃カラマ Calama の町へ。どうやらここで俺だけ乗り換えるらしい。そんな乗り換えの話、初めて聞いた。隣りの女性がいろいろと事実確認をしてくれる。女性にお礼を言ってバスを降り、バス会社の営業所まで歩く。乗り換えのバスが来るまで1時間。チリのお金を1ペソも持っていないのでカンビオに向かうがもう閉まっている。ビールが飲みたいなと賑やかな飲み屋で、道端の屋台で、アルゼンチンペソを差し出すが首を横に振られるだけ。仕方なしにバス停で大人しく待つ。
photo by © HOSOI Toshiya
8時半。乗り換えのバスが到着。これより3時間半かけてアントファガスタへ向かう。となりの席はセサという名のペルー人旅行者。22歳の船員で休暇中にひとり旅をしているとのこと。
知り合いが日本にいるので日本語少しだけ知ってるよ、と言い「オイ、ナンダ、コノヤロウ」と嬉しそうに連発。コメディ映画を片目で見つつ、互いに同じところで笑うと会話が始まる。会話が止まると映画に目を移し、笑える場所でまた会話が始まる。そんな穏やかなコミュニケーションを続けていると2本目の映画はシリアスな内容に。ふたりとも寝てしまう。
深夜零時。アントファガスタに到着したようだ。セサに別れを告げて町を歩く。この時間の町は人通りがなく、時折すれ違う程度。初めての国の初めての町で、金もないし泊まる宿も決まっていない。それなのに気分はとても落ち着いている。6ブロックほど歩き1件目の宿で部屋を見つける。
宿は良く言えば非常に構造的で三方の棟のそれぞれの2階に向かうには建物を結ぶ空中の渡し廊下を登ってゆく必要がある。木造の階段を一歩登るごとに木材が軋む。その渡し廊下のバルコニーではウルグアイ人の女の子2人と宿の男の子、べろべろに酔っ払った兄ちゃんとその身重の妻が大騒ぎをしている。
荷物を置くと俺もその場に混ぜてもらう。お金がないことを伝えるとご馳走してくれるとのこと。赤ワインを注いでもらい、酔っ払った兄ちゃんと英語で話をする。彼はブルックリンに2年住んでいたのが自慢で、英語が一切わからないほかのメンバーを執拗に小バカにする。ただしその英語は極めてブロークンでいくつかの単語と「ブロー」「ファッキン」「○○○」「フォグドッグ」を単語に絡めて和えた感じ。俺たちはインテリだ!と言いつつ語尾は「○○○」。
大麻を買いに行こうと誘われるが遠慮する。彼はベロンベロンに酔っ払ってグラスを割ったり、妻の髪の毛を引っ張ったり、隠されたワイングラスを探して妻を引き倒しちゃったり、トイレに行く途中バルコニーから転げ落ちたり、ボウル大に入ったキャベツを一気に食べて底に溜まったキャベツ汁を一気に飲み干したりと好き放題に騒いでいる。
誰かマジギレするかなと思うのだけれど皆が温かく見守って大笑いしているのが印象的。酔っぱらいに寛容だね。宴は下ネタと泥酔による馬鹿笑いに終始するのですがなんだかとても楽しい。「ハポネチンコ」で大笑いが長引いたのでめんどくさくなって部屋に戻って寝る。
posted by: トシ★細井
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