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コミュニケーションのかたち [ブラジル]


10/15|34日目
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記

10/15|34日目

朝からポツリポツリと雨が降っている。顔を洗って朝食。朝食でも相変わらず喋れない日本人です。
今日でこの3泊4日のツアーも終了。長かったブラジル滞在も数日となり、このあと国境の町ポンタポランからパラグアイ入りする予定。今晩はボニート Bonito という小さな町に泊まるつもりでいたけれど、日曜日だからボニートまでのバスはないよとレジェに言われる。ボニートの手前の町アナスタシオンまでしか行けないとのこと。

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photo by © HOSOI Toshiya

今日は2日目の午前中と同じアクティビティということで森を歩く。コルコバードの丘で買ったカッパを羽織り、トラックの荷台に乗り込む。雨除けに幌をかけているが容赦なく雨が入り込んでくる。カッパを持ってる人は俺しかいないので雨が一番入り込んでくる席と代わってあげる。石鹸を貸してくれ、ライターを貸してくれ、タバコを一本頂戴。そんなキャラじゃないのに何かしら物を持っているオレにそういったお願いをしてくる。深いコミュニケーションがない分、そういったやさしいだけの日本人像を持たれた自分に腹が立つ(仮定の話)。

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photo by © HOSOI Toshiya

ウォーキングは2組に分かれる。ベルギーの4人とニコレッタとオレ。小雨の降る中、動物にもなかなか出会わない。2時間もすると小雨も止み、3時間ほどのトレッキングを終える。皆さん疲弊気味の様子。昼食までの時間を持て余しつつ、空腹を抱え食堂で会話をする。オレには聞きとりだけで精一杯。そんな中ドッジとベルギー人の男前がサッカーボールを蹴り始めたのでそこに混じる。小雨の中ぼろぼろのサッカーボールを裸足で蹴りあう。会話の苦手な自分を気遣ってくれる様子がサッカーボールを通して伝わってくる。昼食を食べて、ひと休みするとまた3人でボールを汗だくになって蹴りあう。そのうち裸足の足が赤く腫れてビリビリと痛んだけれど痛いそぶりなど見せられなかった。

帰りのバスまでまだ時間があり、皆ハンモックで眠っている。シャワーを浴びて、食堂で一人日記を付けているとニコレッタがやってきてメアド交換。マンツーなのでやっとゆっくり喋れる。このツアーではコミュニケーションのスピードに付いていけずホトホト参りましたと伝えると励ましてくれる。ニコレッタはマイペースでのんびりしたかわいい娘でこの数日も唯一英会話のスピードを合わせてくれる子だった。聞き取れなくて問い返すと「It's O.K.」と話が終わってしまう、その繰り返しの中で徐々に喋れなくなってきたのだけれどニコレッタとはこの4日間ちゃんと会話ができた。
ニコレッタは丸々一年間に及ぶ南米旅行をあと1週ほどで終えるという。ベネズエラからパタゴニアまで大陸を一周し、パラグアイからパンタナール入り、今日自分とは逆方向のサンパウロへ向かう。サンパウロから地元のベネチアに帰るという。パンタナールからボニートに入り、ポンタポランからパラグアイ入りする国境越えのルートも初日にニコレッタから教わったルートだ。ウシュアイアやサンティアゴのお勧めの宿などを教わり、互いの国に行くときは連絡を取りあおうと約束をする。出発の時間だ。

ベルギー人の4人と挨拶をするけれど男前のベルギー人としか別れを惜しめない。彼とは力強い握手をし屈託のない別れを表現できるのだけれど、ほかの3人とはぎこちない空気が流れる。そんな自分にとても驚き、呆れる。「環境が人に与える影響」なんて話題がありますがまさにそれ。コミュニケーションの苦手な人間のステレオタイプを自分がなぞり、本来の自分がわからなくなる4日間。この本州を飲み込むほどの大湿原の中、6~7人とのコミュニケーションに自分が変質した。だけれども振り返ってみると強く記憶に残る4日間。

ジョージとドッジ、ニコレッタとトラックに乗り込み、数日前に通った道を戻ってゆく。時間を遡るような感覚。バスの時間がギリギリなのか、雨をタップリと含んだ文字通りの悪路をトラックは飛ばす飛ばす。乗客に気兼ねない運転に4人で顔をしかめる。尻がぽんぽんとマンガのように飛び上がり荷台のちっぽけな錆び穴から泥水が跳ね上がる。戦場を行く兵士の気分だ。もちろん戦場に行ったことはないけれどきっとこんな感じだろう。
バス停に到着。大量の蚊の群れに閉口しながらバスを待つ。虫除けクリームを使い切る勢いで肌に塗りたくったがバスが来る数分の間に十数箇所刺される。ニコレッタがとても心配をしてくれて、バスの運転手にボニート行きのバスについて質問してくれている。ミランダ Miranda で今日唯一のバスに乗り換える事ができればボニートまで辿り着けるとのこと。

1時間ほどでミランダのドライブインに到着。カンポ・グランジに戻るジョージとドッジ、ニコレッタはここで休憩、オレは乗り換え。バスを降りるとすぐにニコレッタに急かされてドライブインから少し離れた別系統のバス停に小走りで向かう。
ミランダはバス停以外には何もない町。西日が幅広の坂道に長い影を作る。その影を追いかけるようにゆったりとした傾斜を300メートルほどゆくと道端に数人の人々が見える。あそこだ。
立ち止まりニコレッタにお礼を言う。互いの旅の安全と再会を約束する。ニコレッタが西日の方へ坂道を下ってゆく。それはそれは美しい情景。

バスが来るまで発券所のシャッターは降りている。その前に座っている地元の人にいくつかのポルトガル単語を駆使してバスの時間を聞く。典型的なボディランゲージで意思が伝わると互いに満面の笑顔。
バスが来るまであと30分ほどある。ジョージとドッジに挨拶できなかったなと思い、もう一度ドライブインの方へ戻る。ドライブインで軽食を取っていたジョージとドッジにお礼を言う。ジョージが自分用に買ったパンとジュースを「甘すぎる」とか言って袋ごとくれたので有難くいただく。ちっぽけなドライブインに大型バスが5台停車し今から買い物できる状態ではなかったのだ。
合流したニコレッタにバスの時間を伝えると慌てすぎたと恐縮している。バスに乗り込むジョージとドッジとがっちり握手を交わす。ニコレッタとは互いに照れ笑いしながら握手。

バスに乗り込みボニートへ向かう。イヤホンを耳に挿し、後方に流れる景色を見るでもなく見る。
うあぁ~切ない!なんだかとても切ない、じわじわと切なさが染みこんでくる!
3泊4日のツアーの中で皆が徐々にコミュニケーションを深めてゆく中、自分だけが一定のラインを超えることができなかったという不甲斐のなさ、それが本来のニコレッタとの別れの切なさにブレンドされてもうどうにも止まらない!ひょっとしてこれがサウダージか?そんなひとりボケも押し流されるこの切なさ。こんなときは仕方がないとノラ・ジョーンズを聞いちゃったりする。
車窓の向こうでは夕闇の中話し込む主婦とそのまわりで遊ぶ子供達。田舎の商店をいくつか通り過ぎていくうちにあたりは暗闇に包まれてゆく。黒々とした窓には自分の左腕と前方の座席が映りこんでいる。

3時間ほどしてボニートへ。夜の8時、とても静かな町でメインストリートもバスが行ったっきり通らない。客引きの兄ちゃんをうっちゃってホテルを探し歩く。途中の軽食屋では歩道のテーブルに若者達がたむろしている。3件目にまわったバス停から500メートルほどの25ヘアイスの宿に決める。そこのオーナーは物腰は柔らかなのだがどこか超然としていて妙な迫力がある。痩せ細った長身の体、右肩が少し上がり、メガネの奥の瞳孔は開きすぎだ。部屋は清潔で久しぶりのシングルルームに疲れた体が喜んでいる。夕食を食べに宿を出る。

スーパーで夜食用のオレンジを2つと水を購入。食事を取れるような店は先ほどの軽食屋しか開いていない。お決まりのX-saladaと瓶ビールを頼み、若者達がたむろする歩道のテーブル席へ。皆オシャレに気を配り、男はやんちゃな感じで女子達は一目にかわいらしい。座ってすぐに気付くのだけれど彼らは耳が聞こえない。手話でコミュニケーションをし、時折静かな笑い声をあげる。程なくある予感というか胸騒ぎのようなものが湧いてくる。その予感にひとり気付きドキドキしている。
と、そのとき犬が吠えた。激しく吠え立てる。
そちらに目をやるとまず女の子と目が合う。その向こうで飼い主に連れられた大型犬が虚勢を張っている。彼らは気付かない。彼女は犬を見やると振り返り、ニコリと笑った。その健康的な笑顔に歯矯正の金具がのぞく。彼女はポンと跳ねるように立ち上がると隣りの席に座ってくる。彼女の名はジェシカ、18歳、高校3年生。カンポ・グランジにある学校の皆でボニートに3週間の休暇中とのこと。出身地やボニートについて、好きな授業と嫌いな授業、好きな音楽や東京のこと。お喋り好きの女の子らしい屈託のなさで質問を浴びせ、質問に答える。
彼らは喋れないしオレも喋れない。だからこそオレの持ってるポケット辞書や指差し会話帳でコミュニケーションが取れるかもしれないなんて胸騒ぎがしていたんだけど、その予感の通りサムアップとサムダウン、表情と筆談でとても静かだけれど豊穣な会話を楽しむ。
心の中では震えるほど感動していたわけです。涙目になりそうだったけれどここで涙目になったら意味不明なのでグッと堪える。ここ数日で感じていた言葉の限界による徒労感がみるみる癒されていく。

ほかのメンバーも興味を持って寄ってくる。まずジェシカの彼氏が心配そうにやってくる。そのうち若者8人が入れ代り立ち代りやってきて話し込む。会話の手段としては筆談や指差し会話帳でジェシカと話し、彼女が手話で皆に伝える。
結局11時過ぎまで話し込む。皆と握手をし、笑い、親指を上げる。途中カメラを部屋に置いてきたことを悔やむけれど、旅の本当に素晴らしい瞬間をカメラに収めてしまうのはどうだろう。
ジェシカは休暇に退屈していたのだろうか、最後まで話に付き合ってくれた。ジェシカによると一週間後の21日にここボニートでカーニバルがあるとのこと。「それまでボニートに居なさいよ、あなたはとても良い感じだから結婚相手を探してあげるわ!」なんてキラキラした笑顔で言われると旅程なんて正直どうでも良くなってしまう。軽食屋のおかみさんにもいろいろと世話になり、満ち足りた気分で店をあとにする。夜道を宿まで歩きながら、旅の因果に思いを馳せる。

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posted by: トシ★細井

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