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ブラジルの洗礼、またはオレの妄想か [ブラジル]


9/20|9日目
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記

9/20|9日目

強い雨が降っていたかと思うと途端に止む。この季節、朝方は決まって雨が降るのだろう。
地階のバスルームでシャワーを浴びていると停電になり、暗闇の中、水を浴びる。ブラジル領事館でビザを取得し、バス停でサンパウロ行きのチケットを入手する。プエルト・イグアスでビザを取得すると渡航期間は30日間しかないようだ。日本やブエノスアイレスで取得すると90日間のビザになるがこの際致し方なし。ケンとマイコと3人、ローカル向けのカフェで朝食をとる。甘い菓子パン、コーヒーをたっぷり2杯。

DCimges 230
photo by © HOSOI Toshiya

バス停に辿り着くと目の前をバスが出発するところ。ギリギリ乗り込み、いざブラジル側の町フォス・ド・イグアス Foz do Iguasu へ。アルゼンチン、ブラジルそれぞれの出入国管理局でバスを降りる。アルゼンチン側では審査が終わるまでバスが待っていてくれるけどブラジル側では一本やり過ごさなければならない。バスがなかなか来ないので記念撮影をしたり、チリ人の出稼ぎのおじさんと話し込んだりして時間をつぶす。目的のバスがなかなか来ないことに終始そわそわしているおじさんを見てなんだか安心する。広大な平原の真ん中にポツンと立つ出入国管理局。すっかり晴れ上がった大きな空の下、突然降って湧いたこの時間を大切に思う。あぁここはもうブラジルなんだなと少し感慨に浸る。40分ほど経ってやっとこさバスが到着。バックパックを背負いいざバスへ。

フォス・ド・イグアス。アルゼンチン側と比較するに何ともきれいな町だ。町自体も大きい様子。道を行く女の子の雰囲気が明らかにアルゼンチンの女の子と違う。この点大いにケンも同意するがマイコは首をかしげる。客引きの兄ちゃんに付いてゆき、タクシーで両替所と長距離バスターミナルを廻ってもらう。通貨はペソからヘアルへ、バスターミナルもロドビアリオ Rodoviaria という名称に変わる。ここからマイコとオレはサンパウロへ、ケンはクリチバへと向かう。ケンとサンパウロでの再会を約束し、バスターミナルで別れる。結局会えないのですが。その代わりケンはオカダ君と出会うことになる。

長距離バスはフォス・ド・イグアスを出発してすぐの町でゴチイ大男5~6人を乗せる。全員がヴァンダレイ・シウバのようなこのムキムキの集団はびっくりするぐらいにバス車内で大騒ぎ。ポルトガル語をのべつなく捲くし立てては馬鹿笑いを繰り返し、バス車内の空気をビリビリと震わせる。特にボスキャラの男が通路を挟んだ隣りに座り、日本ではちょっとありえないほどの落ち着きのなさ。見た感じそれほど若いようには見えないが動きはまるでウザイ高校生のそれ。しかも雰囲気から読み取るにその笑いはひどく悪意のある嘲笑に属するようだ。マイコと2人、たまたまノートに鉛筆を走らせていると大声でそのことを仲間に報告し、小馬鹿にした笑いを続ける。14時間半のサンパウロまでの道程はどうやら運に見放された様子。

騒がしいボスキャラがコトリと眠ってしまうと車内に静寂が訪れる。大袈裟でなく起きている時は間断なくうるさい。それほどうるさいのに周りの同乗者は嫌な顔ひとつするわけでなく、皆笑顔を絶やさないニュアンス。この感覚。その後ひと月ブラジルに滞在する中で何となくわかってはくるのだがその時は全くもって理解ができない。つまり、

  1. ブラジル人はえげつない事をされても涼しい顔をしてやり過ごすのが粋。
  2. 長距離バスの後列の席には良くも悪くもボスキャラが座る。

ふたつ前方の席には180センチを裕に超える体躯とガエル・ガルシア・ベルナルのような甘いマスクを持つ若者がいたのでそいつがこのボスキャラを嗜めるシーンを夢想していたのだがそれは現実にはならない。むしろ率先してボスキャラの笑いに同調している様子。素人ではありえないぐらいのその逞しい上腕筋は見せ掛けなのか!

ボスキャラが眠っている隙を突いて自分もいつの間にやら眠っていた様子。ハッと目を覚ました時、隣りのボスキャラが窓際の女の子に腕を振り上げ、キスを強要している。2度3度太い腕を振り上げるのだが、女の子の抵抗に遭って、ひとまず諦め、狸寝入りの体勢をとる。「殴るぞ」というポーズに見えた。時刻は夜11時過ぎ。バス車内は暗闇と静寂に包まれ、その女の子の啜り泣きとも怯えとも付かない振動が伝わる。寝起き特有の心地良い霧のようなものは吹き飛び、状況を理解しようと努める。要はボスキャラがムラムラッときて隣りの席の女の子にちょっかいを出しているのだ。ポイントはそれが無理強いなのか否か。

でかくてバカでヴァンダレイ・シウバみたいな男だ。あの太い腕の持ち主でしかもバカだということを思い浮かべると泣きたい気持ちになるが腹を括る。括った瞬間、腰全体が震え、続いて膝下が震える。ヤなんだけど、次にそのような暴力的な状況を目撃したら止めなくちゃ。あとから考えると笑けるんですがこんな時に心の支えになるのは意外とナショナリズム、大和魂。
気付けばその女の子のひとつ前の席の同年代の女の子がブックライトを点けたりトイレに向かったりして間接的に存在を訴え、抑止している、ように見えた。肩にガチガチと力を入れながらまんじりともしない時間を過ごす。それからの時間は本当に本当にとてつもなく長く、重く、怖い。

ボスキャラは狸寝入りをしているが時折忘れた頃に女の子に覆いかぶさり、チューをするとまた眠りの体勢を取る。ただ明らさまに腕を振るい上げて女の子を脅す感じはもうないんです。カタツムリのように時間をかけて、断続的にキスしたり、おっぱい揉んだりしているんですが起き抜けに感じた圧倒的な暴力は起こらない。今振り返ってみても確かにあの瞬間は黒く塗り潰した暴力が車内を充満していたはずなんですが果たしてこの認識は正しいのだろうか。オレとその前方の席の女の子はその空気に体を絡み取られながら、ひとつひとつの動作、例えば足を15センチずらしたり、フードを外したりして、己の恐怖と対峙していたんです。

結局それから一睡も出来ず、文字通り時間が事態を収拾してくれた。つまりこういうことだ。深夜未明トイレ休憩でバスが停車すると、皆が目覚め、ボスキャラがまた大騒ぎを始める。そして信じられないことにその女の子は出発間際また同じ席に座ったのだ!空いている席はあるのに!!そんでもってボスキャラと若干会話を楽しんだりする始末。今まで喋っていなかったのに!!サンパウロに到着する頃にはボスキャラの日本人をネタにした冗談に対して、申し訳なさそうに笑いながら目を合わせてくるのだ!まるで「ゴメンなさいね~」と言わんばかりに!すっかり彼女面か!

ファック!!
あぁ~、でもこんな話、寺山修司の映画であったような・・

サンパウロに到着するとボスキャラは女の子に見向きもせずに歩き出す。その集団、狭いエスカレーターを追い抜く間際、ガンくれて舌打ちしやがった!

ファック!ファック!ファック!

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posted by: トシ★細井

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