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ピラニアを釣る/馬を駆ける [ブラジル]


10/14|33日目
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記

10/14|33日目

朝食。オーストラリア人のジョージとドッジ、ベルギー人の美男美女カップル、ベルギー人の太っちょとノッポでテーブルを囲む。昨晩、ベルギーからの4人を大いに笑わせたジョージが今朝もマシンガントークを繰り広げる。たぶん、ある側面でものすごくバランスが取れていたのだろう。互いの会話を十二分に楽しんでいる様子。時折話をふられるが英会話のスピードに全然ついていけない。
朝食を食べ終えるとレジェから今日の予定、服装などの説明を受ける。ポルトガル語訛りの英語が聞き取れないので、個別にあとから質問をしなおす。英語が聞き取れない、周りとのコミュニケーションに限界がある、ということで朝っぱらから気持ちが下がり、状況に呑ま込まれ始める。

例のごとくギリギリまでトイレに閉じこもり、下痢止めの薬を飲んで、トラックの荷台に乗り込む。荷台に8人、ドライバーと助手席にレジェ。今日は遠出をしてピラニア釣り、乗馬を行う予定で帰りは夜遅くになる。天気の良い乾いた風の中をトラックに揺られてゆっくりと進む。景色は遥か遠くまで見通せるサバンナの様相。頻繁に川や沼が現れては過ぎ去り、助手席に座るレジェはクロコダイルや大きな鳥、湿原をのどかに歩くカピバラの家族を見つけるとドライバーに声をかけて、ゆっくり走ったり少し戻ったりしながら説明を行う。
道中、鼻がひん曲がるほどの腐敗臭が漂っては皆が悲鳴を上げる。大抵数10メートル先に行き倒れた牛の死体が転がっている。白骨化したものから、今まさにコンドルに啄ばまれながら朽ち果てようとしているものまで。今日が初めてのアクティビティであるベルギー人の4人は牛の死体にも興奮していたがそのうち見慣れてしまう。臭いには慣れない。

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photo by © HOSOI Toshiya

突如トラックが路肩に停まり、いよいよピラニア釣りが始まる。アマゾン河で釣り上げることができなかったので激しくリベンジの炎が燃える。ドライバーも降りてきて餌となる牛肉の塊を切り分け始める。沼をズブズブと踏み進め、ヘソあたりまで体を沈めてピラニアを釣る。ピラニア釣りなのに体を沈めるという部分に若干のロマンチズムの喪失を感じるが浸かってしまえば気持ちいい。
ニコレッタが岸からの第一投で真っ先に釣り上げる。おいおい~。いや、焦るな、慌てるな、気分を落ち着かせ、糸を垂れる。あちらこちらで釣りあがり始めるがピラニアはそれほど大きくない。「この木陰だ」と狙いを定めてからというもの実は引きがガンガンにあったのだ。興奮をひた隠し、あとはタイミングだなと数度探りを入れる。

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photo by © HOSOI Toshiya

グイッ!釣れた!この手応え、ビッグワン!ほかのメンバーの釣り上げたピラニアよりも大きい!(ほんとだよ)
レジェが岸辺から満面の笑みで声をかけてくれる。写真を撮ってやるから岸に上がって来い、と腕を振る。「う~、ありがとう~」初めてレジェとダイレクトにコミュニケーションが取れた気がしてしみじみウレシイ。沼には入りたがらないニコレッタが「ほかのピラニアより大きいね」と声をかけてくれる。
はい!ここ!ここでスイッチが入りました。
アマゾンピラニアフィッシングへのリベンジの紅い炎はこのグループの中での地位向上の蒼い炎へ、ボッと燃え変わりました。
トラックの荷台での道中も英会話力の限界を感じ、声をかけられるのはライター貸してくれとかその程度。ジョージとドッジ、ノッポがタバコを吸うのだがノッポはそのうちライターをつける仕草で済ます次第。てめぇー日本語圏じゃただじゃすまさねぇぞ、と思いながらもライター貸してた自分にサヨナラ。
牛肉片を5つ左手に持つとズブズブと沼地へ引き返す。ピラニア釣りには言葉はいらない。間を重視する突っ込みもお決まりのスラングも三段落ちもいらない。あんまり釣りしたことないけど完全に釣り吉キャラになってました。水面を見るでもなく見、その先の濁った水中、水底を想像して意識を尖らせる。
釣りも釣ったり、ビッグワンを3匹、ちっこいのを4匹。立て続けに釣り上げてからは、ドッジに釣れるポイントを譲って岸辺でひと休み。ノッポは一匹も釣れてない。一生釣れるな!

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

そんなわけでそれぞれに首まで浸かっての競い合いで釣りを終える。荷台に戻ってトラックは走り出す。それそれに10匹前後釣り上げ、ピランニャネタで盛り上がる。ま、少しするとまた早い英語とオーストラリアンジョークになってしまうのですが。。
通り沿いの雑貨屋さんで冷たい飲み物を飲んでひと休みすると、次はホースライディング。レジェが放牧地の木製の扉を開閉するために都度トラックを降りて、大きな牧地を4つほど通り抜ける。ジャングルの入り口から少し行くとちょっとしたキャンプ場のような場所へ。シートを張った炊事場と木陰にかかったいくつものハンモック。ひときわ大きな木には黒や白のマカッコが5匹ほど寛いでいる。

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

レジェとドライバーが釣り上げたピラニアの調理を始める。料理ができる間、のんびりと会話をしたり、突如現れる大きなリザーズを追いかけたりして思い思いに時を過ごす。お昼はピラニアの煮魚とピラニア揚げ、バナナを揚げたもの。外で遊べば腹が減る。おいしいおいしいと皆でペロリと平らげる。15時から乗馬という説明を受け、それまでの二時間はシエスタ。皆ハンモックでうたた寝する。眠ることに飽きるとギターを弾いたり、レジェが横になっているところを囲んでパンタナールについての質問をしたり。レジェは目を瞑って質問に答え、皆は立って話を聞いている。サービスをするものと受けるものの構図としてはいささか特異であり、印象に残る。

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photo by © HOSOI Toshiya

午睡から目覚め、皆で100メートルほど歩くとそこには10頭超の見事な馬達がいる。乗馬をするから長ズボンを、という話でしたがその部分を聞き逃していた。まぁしょうがないか、とレジェ。それぞれに馬を与えられると事前の説明らしいものもなく、すぐに騎乗し動き出す。馬糞がぷかぷか浮かぶ池をおっかなびっくりで超えるとそこは広大な放牧地。黒々としたバッファローの群れと牛の群れが遠く池のほとりで水を飲んでいる。オレが乗る馬はスタコラとその間に割り入って水を飲み始める。バッファローは獣だ。かなりドキドキする。

池の前に全員が揃い、いざ出発。それぞれのペースでスタートし、上手く進めない人にだけレジェとドライバーが馬の扱いを教えてあげている。そしてこの広大な放牧地を贅沢に横切るとまた新たな放牧地へ。アルマジロがのんきに散歩している中、またまた新たな放牧地へ。
日本では考えられないなぁと思う。乗馬帽に乗馬靴、事前に10分間の説明を受けた上で狭い敷地を行ったり来たりというのを想定していたのに、15分後には馬を大きく走らせる。大きなスライドを描いて駆ける馬。オレは騎手のように見よう見まねで尻を上げ、奇声を上げる。
そう!乗馬にも言葉はいらない。太っちょは乗馬経験があり、皆がトコトコ走る中を大きく駆けたのですが、俺の乗ってるアホ馬がそいつに感化されて駆ける駆ける。「やるじゃん」みたいな感じになって、2人で馬を走らせる。団体行動を乱してもレジェたちは何も言わない。男連中は「何をー!」みたいな感じになってまた競い合い。互いの馬の尻を引っ叩き合ういたずらから始まり、今度は百頭ばかりの牛を皆で追い込む遊び。両方から馬で追いかけると逃げ場を失った牛はその中央をものすごい勢いで駆けてゆく。その地響きの壮観さといったらない。

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photo by © HOSOI Toshiya

乗り方は滅茶苦茶なのでふくらはぎが内出血で赤紫の斑点ができ、尻がとてつもなく痛い。恐らく300メートルから400メートルも飛ばすと痛みで失速してしまうのだが、そんな直線距離をもろともしない広大な敷地。スケールでけぇ、パンタナール。
ドライバーとレースをしてぶち抜かれたり、ジョージとドッジには勝てるなぁとほくそえんだり。気付けば馬の首筋は汗をかき、木陰でひと休み。その一服の旨いこと。

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photo by © HOSOI Toshiya

ひと休みを終えて、Uターン。道に迷って前の数頭が棘々の植物に引っ掛かる。そこには小さな川が流れていたのでオレのアホ馬が喜び勇んで川に飛び込む。水に濡れ、両腕に鋭利な傷が3本ずつできる。この傷、日本に戻っても3ヶ月ぐらい消えなくて、なんだかうれし恥ずかしのお気に入りの傷だったんですが半年経ったら綺麗に消えてしまった。

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photo by © HOSOI Toshiya

夕焼けに右半身を染め最後の無茶な走りを楽しむ。牛を追いかけ、奇声を上げ、ルートを大きく外し、カーブを描いて戻ってくる。牛の群れを追いかけ大声で笑う。
何だろう、久しぶりに芽生えたこの大人気ない負けず嫌い根性。上級英語ができない分こういった部分で自己表現をして、相手とコミュニケーションを取ろうという強い気持ち。根底には馬を早く長く走らせること、ピラニアを釣ることは俺のほうができるぞ、みたいな気持ち。小学校時代の他校との選抜大会での「お前50メートル何秒?」みたいな感覚に近い。
不思議なもので馬場に近づくとまた大人しい自分に戻ってくる。さっきまで出ていた大きな声が出てこないのである。しみじみオカシイ。
馬に御礼を伝えて、炊事場へ戻る。後片付けを行い、再びトラックに乗り込む。

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photo by © HOSOI Toshiya

日は傾き、次第に闇に包まれる。雑貨屋で銘々にビールなどを飲み、ひと休み。再び動き出したトラックのボンネットの上にレジェが座布団を敷き、座り込む。自家発電の非常に強いライトで暗闇を照らし、即席のナイトサファリが始まる。カピバラの家族と何度も遭遇し、イタチのような夜行性の哺乳類やフクロウなど夜ならではの動物の表情を垣間見ることができる。圧巻はクロコダイル。夜、クロコダイルに光を当てるとルビー色に瞳が光ることはアマゾンでの経験で知っていましたが、レジェが川に光を当てるとそれはもう天の川。ルビーに光る天の川。川に光を滑らせると無数の瞳が次々とそれに応える。

レジェの提供するサービスに思いを馳せる。レジェの兄貴が友人たちと始めたこのサービスは6時に目覚め、22時に発電機が止まる。ジャングルの中で鳴き声を聞き分け、暗闇の中で動物を見出す。
アジアや南米を旅する中で観光業に対して微かに持っていた小さなとげのようなものが、レジェのサービスに接することでスッポリと腑に落ちたような気がする。
宿に戻ると新しいメンバーが3人到着していた。オーストラリア娘とイタリア人カップル。旅人は巡る。

盛りだくさんの一日が終わる。シャワーを浴びると尾骶骨の部分の尻の皮が剥がれていて沁みいる。食事を終えて焚き火を囲む。22時を超えると発電機が止まり、焚き木も完全な炭と化して互いの顔もわからない。ボートキャプテンがトム・ウェイツみたいな声で言う。「オレは誰でもない」

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posted by: トシ★細井

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