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氷河を歩く/バスクの友人 [パタゴニア]


10/30|49日目
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記

10/30|49日目

シャワーを浴びて食堂に向かうと誰もいない。昨晩は10人弱の宿泊客が食堂でのんびりと過ごしていたのに、皆朝が早い。この宿を利用する人たちは観光客というよりはアウトドアとかエクストリーム系の人々。それも筋金の入った感じ。昨晩エントランスで出会ったソフトモヒカンのエリック・カントナみたいな人は山のようにでかかった。
宿のキレイな女性がテーブルに椅子を上げて、食堂をガシガシ、モップ掛けしている。まだ9時なのに。観光客の俺は椅子を降ろし、昨日買っておいたサンドイッチをもぐもぐと食べる。

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photo by © HOSOI Toshiya

10時。迎えのバンに乗り込む。今日はペリト・モレノ氷河 Glaciar Perito Moreno へ向かうツアー、大きなホテルの前で観光バスに乗り換える。一番前の左右の席に見知った顔の4人が並んでいる。驚きながらもブエノスディアスとあいさつ。マルティアル氷河で出会ったカップル、国立公園で出会ったスペイン人の大男2人。共にエル・カラファテまでの飛行機も同じだった。
観光バスで西へ2時間ほど移動。バス内では年寄りの観光客向けに往年のヒットソングが延々と垂れ流されるのですが、これには閉口した。ホテルカルフォリニアとかアース・ウィンド・アンド・ファイアーの上げ上げの曲とか。

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photo by © HOSOI Toshiya

氷河は突然現れる。川にかかった橋のように当たり前に眼前に現れた。バスを降り遠景からの氷河を前に記念撮影。川にかかった橋と言ったけれど実際にはそんな小さいものではないです。う〜、どでかい。イメージ通りの氷河だ。氷河のある世界は南極みたいな世界を想像していたのですが、足元には砂利石、すぐそこにガードレール。

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photo by © HOSOI Toshiya

バスで更に20分。バスを降りガイドに先導されて遊歩道へ。遊歩道ではそそり立つ氷河の絶壁を目の前にすることが出来る。右側が北面、左側が先ほど遠くから眺めた北面。なんて大きいんだろう。遠くで氷の割れる音が間断なく聞こえる。この先30km続く氷河のどこかで氷が軋んでいるのだ。
1時間半の自由時間。お昼に持参したサンドイッチを口元に運びながら白とブルーの固まりに目を奪われる。遊歩道を行ったり来たりしながら様々な角度から氷河の姿を目に焼き付ける。時折スペイン人の大男、ハヴィとラモンとすれ違う。その都度アホみたいにハイタッチを繰り返す。どこでもそうだけれどすごいものに出会うと人はハイテンションになり、すぐに仲良くなれる。

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

2時半にバスに戻り、いよいよ氷河トレッキング。岸辺でクルーズ船に乗り換え対岸へ。船上ではハヴィとラモンと意気投合。薄々感づいていたのですがこいつらアホです。アホでおもろい。「オキナワ!」「横浜マリノス!」なんて叫んでいる。
対岸に移るとスパニッシュとイングリッシュで2言語のパーティに別れる。イングリッシュはジジババばかりでちょっとテンションが下がる。クラス替えのノリですな。唯一同年代のアメリカ人旅行者がいたのでその3人と共に行動。ロビンとスーチル、一人旅のジャネットの3人。ロッジで身支度をして、砂浜で氷河についての講義を聞く。

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

人生初のアイゼンを装着し、人生初の氷河を歩く。イングリッシュ部隊には男性2人、女性1人のガイドが付く。アイゼンを付けた状態での歩き方を教わりながら2列縦隊でゆっくりと進む。

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photo by © HOSOI Toshiya

氷河の表面には大小様々なクレバスが口を開けている。足を滑らせたら二度と戻ってこれないような巨大なものから小銭をいたずらに投げ入れたくなるようなかわいいものまで。巨大なものの場合はガイドにサポートしてもらった状態で通り過ぎたり、飛び越えたりするのですが、クレバスの原体験は映画「南極物語」なもんで恐怖が先に立つ。

クレバスはストローを差し入れたくなるような、ブルーハワイの蒼。深度が深まれば深まるほどその蒼味は増してゆく。深度が深まるほどに雪の重さが積み重なり、最終的に氷河の積雪密度は5倍から10倍になってゆく。積雪密度が高まっていくと光線の青以外は飲み込んでしまうという。

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

ツアー客はブルーの美しさに嬉々としてシャッターを切るのですが、後列を守るガイドのオッサンは「その程度のクレバスで隊列の進行を崩すな」と厳しくツアー客を押し進める。このオッサンの顔色を窺ってはクレバスや氷河の写真をパチリパチリと撮るのですが、人が写っていない写真はホワイトバランスがおかしくなって赤味や黄色味がかったグレーになってしまう。本当は白から紺碧への美しいグラデーションで世界が構成されているのですが。

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photo by © HOSOI Toshiya

ロビンとスーチル、ジャネットのアメリカ人旅行者3人と写真を撮りあったり、声を掛け合ったりしてトレッキングを楽しむ。体験したことのない世界に今いるという興奮状態、どこを切り取っても変わらない青と白の世界が時間感覚を麻痺させる。1時間なのか2時間だったのか、この素晴らしいトレッキングのトリは氷河のアイスでウィスキーのロックです。贅沢です。

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photo by © HOSOI Toshiya

ロッジに戻り、甘いコーヒーでひと休み。ロビンは気い使いで、コーヒーがなくなるともう一杯持ってきてくれる。恐縮です。
スパニッシュ部隊も戻ってきた。ハヴィとラモンはスパニッシュ部隊のバスク Euskara 出身者のボスになっているようで、バスクの若い奴ら10人ぐらいを俺に紹介してくれる。
日本から来たことを知るとバスクの女の子5人が「ハイジを知っているか」と興奮して話してくる。アルプスのハイジがスペインでアニメ放送されていたようで日本語で歌を歌ってくれとせがんでくるのですがそんなの知りません。女の子5人がハイジの歌を思い出させようと、俺の目を見つめてお尻を振り振りハイジのアニメソングを一生懸命歌うのですが、思い出さないし、なんかすごい可愛くて、まさしくノックアウトされる。

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photo by © HOSOI Toshiya

ハヴィとラモンと3人、ふざけ続ける。「ヤマモト コマンダント!」「ヤマモト サージェント!」「ショーグン!」なんて言って笑かしてくる。山本五十六のことみたいです。
ロッジの石碑の前でバスクの若者にカメラを構えさせ、写真に収まる。石碑の向こう側からハヴィが人差し指を出せ出せ言うので差し出すと2人で指を差し合いパシャリ!そばにいる人、皆が笑う。「新しい!」と感嘆する。笑いが取れたので2人でハイタッチを交わす。

そんなわけで帰りの船でもバスク人たちと盛り上がる。今まで自分が道化になって周りを笑かすことはあっても、その笑いを被せられることは初めてのことだった。瞬間的にバカ笑い。つまり互いに笑いが低レベルなので言葉の壁の厚みを感じないのだ。ハヴィとラモンとはアホ同士、対等という感じがした。

ハヴィとラモンにバスク語をこっそり教わり、バスク語の言い方と顔だけでバスクの若者から笑いを取る。「船の舳先〜!」とか「引き潮ぉ!」とかバスク語で叫ぶとドッカンドッカン受けた。
互いに笑いの壺が同じであることに感動していたのだと思う。なんだか興奮して、今度バスクに遊びに来い!と声をかけられる。行くよ!と応える。

帰国後バスクについて少し勉強した。スペインとカタルーニャ自治州の関係はレアル・マドリーとバルサの関係性の中で何となく知っていたけれどバスク自治州についてはハヴィとラモンに会って初めて意識した。2人の贔屓のチームはアスレティック・ビルバオ。バスク人の血が流れていないと入団できないクラブだ。スペイン人ではなくバスク人であると考える歴史的背景、誇り。
バスク語を叫ぶことで皆が嬉しそうにしていたのはこういった理由もあったのかもしれない。

船を下りてバスに乗り込む。バスの中でロビンとスーチルに夕食に誘われ、快諾。バスで2時間揺られて街へ。街に到着すると、皆が一斉にゴチャゴチャと乗降口へ向かう。降りるのが遅れてしまい、ハヴィとラモンに挨拶できなかったな、と残念がると少し先を歩いているのが見える。「ハヴィ!ラモン!」と声をかけるとラモンが戻ってくる。握手、ガッチリ抱擁。ハヴィも良い顔して戻ってくる。
握手して抱き合い、「次の旅はバスクに来い!」と何度も声をかけられる。アホ同士、サッパリとした良い別れをする。

ロビンとスーチル、ジャネットと夕食へ。ロビンとジャネットはベジタリアン。3人はパスタ、俺はカルネを頼む。同年代であり、同業種であり、互いに旅好きで映画好きと言うことでスーチルのルーツであるインドを旅した話や好きな映画について話題は尽きない。アルコールはビールから赤ワインへと移る。英語が聞き取れないときはスーチルがやさしく言い直してくれる。年を取ると互いに優しくなれるよねとしみじみ思う。レストランを出るとチョコレートの美味しいお店でコーヒーを飲む。
ロビンとスーチル、俺は明日同じフライトでブエノスアイレスに向かう。旅が終わってしまうという微妙な感情を共有し会う。3人と別れる。

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photo by © HOSOI Toshiya

宿に戻ると3人のアルゼンチン人が夕食を食べている。明日ブエノスアイレスに飛び、旅が終わるのでサンオイル、蚊取り線香セット、虫除けスプレー、虫除けクリームはいらないかと声をかける。虫除けクリーム以外はもらい手がついて、代わりにボカ・ジュニオルスのカレンダー尽きカードとチューリップブランドのコンドームをもらう。そんなわけでテーブルにお呼ばれして零時過ぎまでビールを飲んで過ごす。

部屋に戻る。ウトウトとしては意識が覚醒し、なかなか眠れない。今日はこの7週間に及ぶ旅の最終日だったのだ。明日ブエノスアイレスに飛び、夜にはヒューストン行きの飛行機へ、そして成田へ自動的に運ばれてしまう。決してセンチメンタルな気分になったわけではないのです。ただぼーっとして眠れない。最終日にしては上出来の一日だった。とても楽しかった。時刻は朝の6時になろうとしている。

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posted by: トシ★細井

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