HOME南米の南米旅行ボカ地区にビビビッと来る。 [アルゼンチン]

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ボカ地区にビビビッと来る。 [アルゼンチン]


9/15|4日目
ひとり旅で行く 52日間ぶらり南米旅行記

9/15|4日目

シャワーを浴びてホステルが用意したカチカチのパンをテレビ室で食べる。どこかの窓が開いているのだろう、食べ終わる頃には体が冷えてくる。今朝はまだ誰も起き出していなくて同室のイタリア人と夜勤のおっさんの3人、会話もなく甘いコーヒーを啜る。

このホステルは完全なバックパッカー宿でスペイン語圏の若者達だらけ。割りと閉じた宿泊客達で昨晩もベネズエラから来た女の子(←ラテン娘ですな)と英語で少し会話するきりであった。

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photo by © HOSOI Toshiya

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photo by © HOSOI Toshiya

街へ。カラッとした空気、強い日差しに鼻の奥が痛み、タバコを吸うノドにも違和感がある。指はびっくりするぐらいにささくれ立ち、血が滲んでいる。
今日はウルグアイへのフェリーチケット、プエルト・イグアスへのバスチケットなどを購入。こういった何気ないことが本当に一日仕事。言葉が通じないのもあるけれどラテン時間というやつが確実にあるんです。
街の中心にあたる地下鉄駅では30人が切符を購入するために列を作っている。全区間統一料金なのに手売りで、窓口内では働き盛りのいい大人が同僚とおしゃべりしながらノンキに切符を売っている。郵便局に葉書を出そうと立ち寄るとそこでも1時間待たされる。船便も葉書も一緒くたで4つ前の夫婦がその場で5つのダンボールの梱包をやり直したりしている。50代前半の上品な背広を着たビジネスマンが文句も言わずに一時間並んでいるのが笑けた。平日なのに。。

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photo by © HOSOI Toshiya

気付けば夕方。今日の目玉であるボカ地区のキンケラ・マルティン美術館へ。美術館は5時半まで。タクシーの運ちゃんに急いでもらう。海へつながる大きく開いた湾に寄り添う形でカーブした道を走り、その袂でタクシーが停まる。
ビビビッ!ビビビッと来た。チップを目的に鼻水を垂らした子どもがドアを開けてくれる。4~5人の子どもに囲まれながら一目で見渡せる小さな港町を仰ぎ見ると心の奥深くの何かが烈しい反応を見せる。そんな小さな動揺を尻目に飛び込んだ美術館、その最初の一枚の絵にスイッチが入る。
ドン・ベニート・キンケラ・マルティン!その絵を目の前にして感激で涙目になっている。その最初の1枚に感化され、目に飛び込んでくる全ての情景に何らかの薬物に反応したかのように感じ入る。
100号の絵に無遠慮に差し込む西日、その部屋にかけられている絵画群に通った主題、屋上の彫刻群、屋上に流れる緩やかな空気、そこから見渡せる色鮮やかに塗り分けられた町。ミニマムな要素から全体へ、また細部へ。あらゆる情報がギュンギュン音を立てて、脳みそに突き刺さり、そのひとつひとつにバカみたいにポジティブに納得している東洋人。しかも涙目。

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photo by © HOSOI Toshiya

旅に出る直前、南米旅行を取り止める気持ちになっていた。周りの知人が話す南米の怖い話(特に姉の!)が気になるし、10年以上会ってなかった友人に続け様に会うしで正直なところ何だか怖くなっていたのだ。
仕事を辞めてひと月、今自分はとても仕事がしたい、それなのにどうして南米に2ヶ月も行く必要があるのだろうか、飛行機のキャンセル料は問題ではない、行くの止めよう。眠れない夜にこう思った。
ただし自分の方針として「どう冷静に考えてみても、そうすべきではない、でも、、、」という状況に陥った時はそうすべきではない方向に進むことにしているので朝が近付く頃には結局南米行きの腹を括っていた。

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photo by © HOSOI Toshiya

そういった過程で出来上がった固く強張った意識のようなものがボカの町に来たことで見る見るうちに溶けてしまったんだと思う。ああ、これだ、こういうことなんだ、こういうことに出会えるのが旅なんだ。旅の4日目にしてそういった鎧のようなものに気付き、気付いた時にはその鎧が溶けてなくなっていた。
このことが良いことかどうかはわからない。というのは「死んでしまったらそれはショーガナイ、この旅を楽しんでやるぞー」という心意気になってしまい、このあと自分が安全だと判断したらサン・パウロだろうがリオ・デ・ジャネイロだろうが夜中に出歩いたりしてしまったから。俺は今どうしてもビールを楽しみたい、とかの理由で。

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photo by © HOSOI Toshiya

(元)港町ボカ Boca。言わずと知れたボカ・ジュニオルスのホームタウン。山の手のリーベルとこれ以上ない対比をみせる下町の荒っぽいクラブチームだ。そんなクラブチームのホームスタジアムが町の中心にあるボカの町は地元生まれの画家、ドン・ベニート・キンケラ・マルティンBenito Quinquera Martinの町でもある。背が低く根暗な吸血鬼のような顔、女にもてない顔。そんなキンケラ・マルティンの銅像やレリーフが町のあちらこちらで見られる。キンケラ・マルティンのアイディアによるおもちゃ箱をひっくり返したように色鮮やかな町並みカミニートCaminitoや彼に依るタイルアート、壁画も見ることが出来る。病院や小学校、幼稚園も彼が自腹で建てたらしい。
キンケラ・マルティン美術館はそんな幼稚園の2、3階にあり、2階には彼が有名な画家から寄付してもらった作品が500点ほど並ぶ。その2階の雰囲気とは対照的に3階の自身の作品には西日なんかがバシバシ差して荒っぽい展示となっているのが微笑ましい。

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photo by © HOSOI Toshiya

展示物の中でも全身がビリビリと反応する青い色の部屋がある。アルゼンチンブルーに塗られた25平米ほどの狭い部屋の壁には40体ほどの船首像が掲げられている。航海の安全を願って船の舳先に取り付けられる例のヤツなんですが1800年代とあるから今から200年近くも昔の船首像がこちら側に倒れこむように斜めに展示されているのである。海風に傷つけられ、色褪せた木彫像の迫力にサブイボが立ち、瞳が滲む。動悸を落ち着かせるために、この興奮は本物かどうかを確かめるために、一度部屋を出てほかの展示を眺めるも、やはり青い部屋に戻るとサブイボが出る。女神、少年、魔女、牧師、ドラゴンのようなもの、畏敬の念を止めることが出来ない。閉館時間に近付き、仕事を終わらせたい係官に「Photo no?」と尋ねる。「No Photo!」
一番好きな美術館。7週間先の帰りの飛行機はブエノスアイレス発。最終日にもう一度来よう。

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photo by © HOSOI Toshiya

ボカスタジアムを横目にホステルまで歩いて帰ることにする。タンゴの衣装に身を包んだオバチャンがニカッと笑いかけてくる。おもちゃの町のようでいて貧しい地域。港と屠場がある労働者の町。キンケラ・マルティンの描く労働者は蟻んこみたいに黒く塗り潰された、しかし力強い働き蟻だ。

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photo by © HOSOI Toshiya

夜。下のベッドで寝ていたインド人の若者と飲みに行くことにする。彼は昨晩深夜にホステルに着いたばかりで今日は一日中寝ていたという。前頭部にかけたサングラスでそのウエッティーな前髪を留めている、オマー・シャリフ似の生意気そうな若者だ。大学、就職共にニューヨークという彼は裕福そうな感じでヴァラナシにも行ったことないし、オマー・シャリフも知らないという。どんなだよ!!とその時は驚いていたけれどオマー・シャリフはエジプトの俳優だったね。
ブエノスアイレスに着いたばかりの彼にサン・テルモ地区を案内するが道に迷いまくる。ドレーゴ広場内にあるオープンカフェでピザとビールをがっつりと頼む。夜になってまた一段と肌寒くなっており、頼んだピザも簡単に冷める。広場では観光客向けのタンゴやフォルクローレも見られるが地元のOL達も飲んでいたりする。しかもこんなに冷えるのに太い二の腕出して冷たいビール飲みまくり。

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photo by © HOSOI Toshiya

生意気なオマーシャリフ曰く「ここのホステルの連中は何だか詰まらない。通常は情報交換などして話が盛り上がるのに全然そういった話にならない。オレはホステルを替えるつもりだ」とのこと。確かにこのホステルの宿泊客は内輪で盛り上がっているニュアンスがあるのは確かだ。でもそれは自分が東洋人だし、彼がインド人だからだと思う。マイノリティがどんなに積極的に話しかけてもマジョリティに受け入れられるにはマジョリティ全体の素養が大きく影響するんだと思う。
零時。ビールを二人で3リットルほど空けたあと自分はホステルに戻ることにする。生意気なオマーシャリフ曰く「ブエノスアイレスと言えばナイトライフだ。何でもう帰るんだ。クラブで踊ろうぜ」とのことだが明日は朝早いので丁重にお断りする。彼は朝の6時までブエノスアイレスのナイトライフを楽しむと言ってビールをもう1リットル頼んでいた。

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photo by © HOSOI Toshiya

1.5リットル分の尿意をチンコにぶら下げて、ホステルまで急ぐがベロッベロに酔っ払っているので足元は覚束ない。道端の酔っ払いと程良く絡みながら何とかホステルのトイレへ。チンコ出しながらも、同時にシッコが出ていた。長いシッコだ。
シャワーを浴びて寝る準備をしてたらオマー・シャリフが戻ってきた。ヤツもベロッベロに酔っ払っていてしゃっくりが止まらないご様子。ナイトライフを楽しむんじゃなかったのかよ、まだ1時にもなってないよ。
オマー・シャリフは24歳。生意気そうだが悪いやつではない。

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posted by: トシ★細井

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